スーパーファミコン音源の認知とバイアス


あなたは、初見でSFCの音源の音を聞き分けることができるでしょうか。

ごく普通の人は、PSGやFM音源と違って聞き分けることができないと思われます。つまり、何らかの手段で「ゲームそのものと一緒に鳴っているところを聞いておく」という、刷り込み学習がないと、何がしたくてこのような音になっているのかということを理解できないのです。

実はこの刷り込み学習は、ゲームに重要な「体験の要素」として強く作用していて、これがSFCのサウンドトラックの魅力でもあるのです。他の汎用的な音源と違って、SFCの音はSFCの特定のゲームタイトルの中でしか聴けない仕様になっています(音色のデータはカセット側に入っています)

スーファミの音源モジュールはS-SMPやS-DSPというサウンドチップから構成されるハードなのですが、これが搭載されている機材は一般的な電子楽器としては存在しません。それは非日常を表現するという点において、ゲームの演出に大きなオリジナリティをもたらしていました。

ゲームタイトル毎に音色の質が異なるという点は、現代のストリーミング再生が当たり前になったWaveデータも同じである気がします。しかし、演奏と再生の違いという意味において、両者は大きく異なるものです。

それは実機による演奏だから良い、という単純なものではありません。様々な制約から生まれた編曲上の工夫や、各メーカーが作っていたサウンドドライバや波形データによって表現される音色のキャラクターが演奏の特徴として明確に現れていました。

こうした独自仕様に合わせてサウンドデータを作っていった結果として、他のメディアではありえない音楽を生み出し、ゲーム内の世界観を彩っていたと言えるのです。

ゲーム音楽とは何か

僕が作曲家を名乗るうえで、1つ肝に銘じていることがあります。それはゲームの音楽というものは、それ自体が独立した評価を得ているのではなく、ゲームそのものの面白さやタイトルの知名度を始めとして、視覚的な魅力や効果音の感触といった「他の要素との印象を相互にバイアスを掛け合った結果」としてプレイヤーに認知され、評価されているということです。

もちろんこれはゲームに限ったことではなく、他のメディアにも言えることであり、音楽が持っている機能でもあります。だからこそ、作り手はサウンドトラックとは何なのか、音に対してどのような意図を持たせるのか、ということを意識して音楽を作る必要があるのです。

僕が作曲家になりたかった理由

これは大人になった今だからこそ言葉にできる部分ではあるのですが、僕が子どもの頃にビデオゲームやアニメーションといったサウンドトラックの演出に魅力を感じ、そのために音楽を作りたいと思った理由が、まさにその「相互にバイアスを掛け合う」部分でした。ゲームに関していえば、特に映像がもたらす色彩や形状といったものに、分かりやすく覚えやすい音楽が付いていて、それこそ時間の感覚が失われるような、何度聴いても馴染んで聞こえてくる感覚がとても良かったのです。

PA Gamesが開発したSFC実機用のゲームソフト「ねこたこ」では、グラフィックスとの馴染みや、表現としての分かりやすさを意識して音楽を作りました。機会があれば、ぜひ遊んで頂ければと思います。